米中貿易戦争、裏ワザの超法規的「報復」を中国がもくろむ

<アメリカの相次ぐ追加関税に対して中国政府が(たぶん)準備を進める、超法規的な5つの反撃方法。トランプが宣戦布告した貿易戦争が世界経済にどんな災厄をもたらすかを検証した、本誌7/24発売号「世界貿易戦争」特集より>

米中貿易戦争が本格化しつつある。

米政府が、中国からの輸入品500億ドル相当に25%の関税をかけると発表したのは6月15日のこと。すると中国政府は翌16日、同規模のアメリカ製品に関税をかけると発表した。すかさず18日にドナルド・トランプ米大統領は、さらに2000億ドル相当の中国製品に10%の関税をかけると言い出した。

そこで中国政府は困ってしまった。同規模の関税をかけて報復したくても、そもそも中国には計2500億ドル相当のアメリカ製品が輸入されていない。そこで中国商務省は翌19日、「量的かつ質的な措置」を取って、アメリカに「反撃する」と気勢を上げた。

ここでいう量的措置が、関税措置の拡大と、場合によっては輸入品の数量制限を意味することは明らかだ。だが、質的措置の意味するところは、いまひとつはっきりしない。そこで参考になりそうなのが、中国が近年、自らの要求を諸外国に押し付けるために取ってきた5つの措置だ。

第1に、中国は輸出入品の通関を遅らせることで、相手国に損害を与えてきた。これは貿易戦争では決して新しい手法ではない。例えばフランス政府は1982年、日本製ビデオデッキの通関を内陸部のポワチエ税関に限定することで、事実上その輸入を制限した。

中国はこの手法を政治目的のために駆使してきた。2010年には、中国の反体制活動家にノーベル平和賞の授与が決まったことに抗議して、ノルウェー産サーモンの輸入を制限。2012年には、フィリピンと南シナ海の領有権問題で衝突したことに絡んで、フィリピン産バナナの通関を遅らせた。バナナは港で腐ってしまったという。

そして今回、中国はこれを貿易戦争の手段として本格的に利用しつつある。既にアメリカ産ウイスキー、豚肉、自動車などの商品が、中国の税関で足止めされている。今後、両国の貿易戦争がエスカレートすれば、対象品目はさらに増える恐れがある。

スターバックスも標的に?

中国が取り得る第2の質的措置は、中国に工場や小売りチェーンを展開する米企業に対する締め付けだ。中国政府は保健・安全性検査から、贈収賄捜査や税務監査まで駆使して企業活動を妨害してきた。例えば、2016〜17年に韓国政府が中国の反対を押し切ってTHAAD(高高度防衛ミサイル)の配備を決めると、用地を提供したロッテグループの系列の、中国にあるロッテマート約90店舗が、防火基準違反の恐れがあるとして一時閉店に追い込まれた。

現在中国に展開しているウォルマート20店舗も同じような運命をたどるかもしれない。フォードやゼネラル・モーターズ(GM)といった自動車メーカーの工場も標的になり得る。

180731cover-200.jpg<本誌7/31号(7/24発売)「世界貿易戦争」特集では、貿易摩擦の基礎知識から、トランプの背後にある思想、アメリカとEUやカナダ、南米との対立まで、トランプが宣戦布告した貿易戦争の世界経済への影響を検証。米中の衝突は対岸の火事ではない>

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